夜中のひと匙

難病と双極性障害Ⅰ型のアラサー。死にかけてICUに収容されるも、しぶとく生き残る。30代で母を亡くし独りになる。拍手を暫定復活しました。お返事できるとは限りません、ご了承ください。

わたしの復讐

新しく人と知り合った時、入院中に友達になった人以外には、病気(難病も含む)のことを隠します。

親しくしてても、いつも「ごまかす」機能が働いていて、嘘をつくこともあるし、言えないことがあるせいでなんとなく整合性が合わなかったり、わたしという人間に謎の部分が出てきて(例えば、なぜフルタイムで働かないのかとか、なぜか体調が悪いとか、病院に詳しいとか)、こちらも隠している引け目があるので、いまいち距離が詰めづらいことがあります。

「ちょっと事情があって~」とごまかすんですが、その台詞は遠回しに「あなたには話せない」と言っているのと同じなので、距離が生まれます。

人を見て、申し訳ないけどこちらで選んで、難病のことだけ話すことはあります。

病院で働いてた子(同僚ではない)には、人柄を見て、付き合いが続きそうだなと思ったところで、さらっと言いましたが、大丈夫でした。あとは身内に病人がいるとかも話しやすいです。まああえて言う必要もないんですけど、これから仕事どうするかとか、そんな話になると、病気のことを言わないとわたしがなぜ独身なのにフルタイム正社員を選ばないのか謎が残るんですよ。「ちょっと事情があって~」と言うと、微妙に距離ができるし、嘘をつく(例えば介護をしてるとか)と、ずっとそれを貫かないといけないので、かなり負担になります。

人選びを間違って打ち明けて、痛い目に遭ったことは何度もあります。知って離れていく人、メールも無視するようになった人もいます。多分、そこまでわたしと向き合うつもりがなかったんだと思います。あとは偏見。

だから言いたくないし、でも言わないとつじつまがあわないし、病気なだけでお金はかかるわ具合は悪いわ服薬通院は面倒だわで自分自身うんざりなのに、一般社会では日陰者みたいにこそこそして(病院や病棟のなかでは闘病を評価されますが、一般社会ではむしろマイナスです)、ばれたら引かれる。

運が悪い、で諦めるしかない。

せめて家族には「お前は子供の頃から頑張ってる、大変だけど頑張ろう」と言ってもらいたいけど、うちの親は両方とも「てめえだけが辛いと思うな」「あんただけが病人じゃないから」という人達で、わたしが八時間の手術をしようがガン治療(わたしはガンではありませんが、治療はガン治療と同じ)をやろうが、たいしたことない、どうせ死なないでしょって態度です。手も足もあるじゃないかと。

去年は死にかけてICUでしたが、父親は会いに来なかった。多分、死んでも来ないと思います。忙しいとか言って。お線香も上げに来ないだろうな。金曜日だったので、土日になるし、飛行機で来てくれると思ってたのに、ICUで寝てたら母親から来ないよって言われて、ああ、わたしの命の値段もそんなものかと思いました。それで泣いたら激痛が起きて、痛い!って声を上げたら母親に「静かにしなさい!」って怒られて、でもICUなのでドクターが即座にばーって走ってきて、そのくらいのスピードで医師が対応する病状なのに、父親は来ないわ静かにしろだわもう、わたしを何のために生んだんですかね。こんなに子供の頃から手術ばっかりして苦しんで、死にかけても「たいしたことない」で、それでも認めてもらえないなんて、何を

したらわたしは病人だと認定されるんでしょうか。

たまに、思春期の頃いつも入院してた病院の前を通ると、胸が締め付けられるような感じがして、中に入って見取り図を見てしまいます。

ああ、ここの病棟にいたなーとか、あの渡り廊下に立って、外来患者を見下ろして時間を潰して、また病室に帰って、今の時間ならあんなことしてたなぁとか、先生は「僕のお嬢さん」ってわたしを呼んで、可愛がってくれてたなぁとか、ナースステーションで看護師さんたちと夜中に遊んだなぁとか、写真とったなぁとか、色々思い出して、わたし家ではそんな扱いだったし、母親からは無視されることが多くて、父親も帰ってこないことが多くて、入院するとみんな「あーちゃんご飯たべたのー?」「あーちゃん検査呼ばれたよー」「シャンプー何使ってるの?」「夜勤だから雑誌貸してー」消灯後に点滴替えに来ると、「ドラマどうなった?わたし録画してきたんだよねー」とか構ってくれて、すごい楽しかったんです。病室の他の

患者さんが、ちょっと杏紗のとこばっかりスタッフが来すぎじゃない?とか言うくらい構ってくれて、多分病棟に十代の女の子なんかいないからだと思うんですけど、いつも無視されて一人で過ごすことが多かったから、手術は嫌だけど入院するのは楽しかったです。

でももうわたしも十代の女の子じゃないし、だけど持病があっても当然なくらいの年配でもなくて、微妙な年代です。

親はわたしを全然しっかりしない、と嘆きますが、医者をやってる友人は「相当しっかりしてる」と言います。「誰にも頼れないと分かってるから冷静」だと言われました。

確かに何でも自分で調べて考えて決めてやってきました。

子供の頃に親が連れていった病院が良くなくて、下手くそな手術をされて酷いことになってたんです。成人してから自分でセカンドオピニオンを探したんですが、探すのも大変で、相手の先生に連絡とったりとれなかったりで、「先生に連絡つかない」と母親に言っても、「(鼻で笑って)つくわけないじゃん、こんな日!」とか寝っ転がりながら言われて、相談にも乗ってくれないし、へーあっそう、みたいな態度で、親って普通、もう少し気にしてくれないんですか?家族が病気で、セカンドオピニオン探すか?みたいな時に、みんなで調べたり考えたりしないんですかね?無視します?お前のことじゃん、お前やれば?しーらね、みたいな態度なんですか?

家族って、たとえ世間ではたいしたことない病気だったとしても、大変だ!大事にしないと!病気だ!みたいにならないんですかね。

うちは医療スタッフが「あーちゃん大変だね。本当に頑張ってきたわ」って言うのに、親が「てめえだけが病気だと思うな」なんですよ。そんな親は、べつに闘病とかしたことないんですけど…

なんか話が脱線しました。

わたしは親に本音とか一切喋らないので、こんなこと思ってるとは知らないと思います。

たまに精神的に具合悪くて泣いてると、「言いたいことがあるなら言え」と言われますが、絶対に言いません。

言わないことがわたしの復讐だからです。

わたしの本当の気持ち、本音はわたしだけのものです。

絶対に教えないことが、わたしの復讐なのです。