夜中のひと匙

難病と双極性障害Ⅰ型のアラサー。死にかけてICUに収容されるも、しぶとく生き残る。30代で母を亡くし独りになる。拍手を暫定復活しました。お返事できるとは限りません、ご了承ください。

ぐち

お金がないからあれが買えない、お金がないからあれができない、お金がないから何もできなくてつまらない。

それで居間にテレビもつけず無言でうつむいて座ってて、何が楽しいんだろう。

できないこと、買えないものを数えて何が楽しいんだろう。

体が元気で、服と靴があって、化粧品もあって、冷蔵庫に食べ物が入ってて、住む家があって、それで十分じゃない。

家でお茶飲んで古本読んでも楽しいし、何も買わなくてもお店を見るのも楽しいじゃない。街中をうろうろして、コーヒー飲んで帰ってくるだけでもいいじゃない。

「買えないものばかりで嫌になるから出掛けたくない」

物を買うことでしか、お金を使うことでしか満足を得られないなら、誰にだって限界はくるよ。

一万円近いコートを買って、「これであと十年は買わなくていい」って言った数日後、「まあ今年はこれで我慢して、来年いいのを買えばいいか」って言ったのを聞いたときには驚いたよ。「これで十年は」って、同じようなコートまだ家にあるよね。あれはいつ着るの?なかったことにしてるの?

ズボンだって何本持ってるの?

着る服がないって、こないだワンピース買ったよね。ブラウスも買ったよね。あれはどうしたの?着てるところ見たことないけど、まだ足りないの?結局着てないのいっぱいあるじゃない。「もう何年もバッグ買ってないから買おうー!」って、2ヶ月くらい前に買ってあげたじゃない。去年も自分で買ってたよ。

まだ足りないの……

お金はいくらあったら足りるの?

月に十万くらい渡せば足りるの?

一軒家に引っ越したい、一軒家に引っ越したい、わたしはその夢を叶えてあげられないよ。

母親が、お金がなくてつまらないって言うたび、それはわたしのせいだと思ってしまう。

一軒家に住んで、家具を買い換えて、旅行に行って、趣味の教室に行って、服を買って、靴を買って、……

わたしはそれを叶えてあげられないよ。

楽しみは自分が作り出すものだよ。

他人が与えてくれる、お金で買わなきゃならない楽しみは、限界があるんだよ。

陰気臭いのだいっきらい。

黙ってうつむいてるのなんか、震えがくるほど嫌い。

お金がないなりの楽しみ方はあるはずだよ。

外食と自炊の違いみたいなもの。

そんなふうにされたら、わたしだって生きる力をうばわれるよ。

みんな楽しいことを探してるんだよ。自分のために。

誰かがそれを与えてくれないからって、既製品を手に入れられないからってふてくされてたって、どうしようもないじゃない。

罪悪感で苦しい。

子供として、そんな親を救ってあげなければならないの?

それは子供の責任なの?